ECサイト(インターネットショップ)の売上を伸ばしていくには、戦略を立ててマーケティングを行う必要があります。自社のECサイトを運営するうえで「ECマーケティングの特徴を理解しておきたい」「ECマーケティングを成功に導くポイントが知りたい」と考える担当者の方もいるのではないでしょうか。

実店舗で商品を販売する場合でもマーケティング施策は行いますが、ECサイトにおけるECマーケティング施策とは何が異なるのでしょうか。

ここでは、ECマーケティングの概要をはじめ、ECサイトの売上を伸ばすために行いたいECマーケティングの具体的な施策例やポイントについて解説します。

【目次】
■ECマーケティングとは
■ECマーケティングの特徴
・データを分析して行える
・インターネットを介して接客を行う
■ECマーケティングを成功させるポイント
1.アクセス数を増やす手法
2.CVRを向上させる手法
3.リピーターを増やす手法
■効果的なECマーケティング戦略に欠かせない要素
・施策の見極め
・ノウハウを持つ人材の獲得・育成
・ECマーケティングの成功事例
■ECマーケティングは戦略を練ることが重要

ECマーケティングとは

ECマーケティングとは

ECマーケティングとは、ECサイトの要素や特徴を押さえ、ECサイトに特化したマーケティング施策のことです。広義の“マーケティング”は、顧客のニーズや市場の理解をしたうえで商品が売れる仕組みを作ることを指します。これにより、消費者自らに自社の商品を選び、購入してもらうことが目的です。

一般的なECマーケティングは、以下のプロセスで行います。

▼ECマーケティングのプロセス
  • 1.市場・競合・自社分析(3C分析)
  • 2.顧客理解・ターゲット・ペルソナの設定
  • 3.ポジショニング策定
  • 4.マーケティング施策の立案
  • 5.マーケティング施策の実行・評価

3C分析では、自社商品が属する市場の規模や状況を分析するとともに、自社商品の強み・弱みの整理、競合状況を把握するために必要なプロセスです。

その後、具体的に顧客の理解を深めます。なぜ自社商品を購入頂けているのか、といった深いユーザーのインサイトを理解し、ターゲット・ペルソナを設定します。

そのうえで自社のポジショニングを明確にしていきます。USP(Unique Selling Proposition)という自社が選ばれる理由を明文化していくと、自ずとどのような商品企画、パッケージデザイン、価格、特集ページのあり方、広告クリエイティブ、ユーザーとのコミュニケーション設計などが定まってきます。

上記に基づき施策の立案を行い、マーケティング施策の評価を行い、改善していく必要があります。

ECマーケティングの特徴

ECマーケティングは実店舗のマーケティングとは異なり、ECサイトならではの要素を考慮して戦略を立てる必要があります。ECマーケティング特有の要素としては、以下の点が考えられます。

データを分析して行える

データを分析して行える

自社運営のECサイトで取得できるデータは、サイトを訪れたユーザーの会員属性だけではありません。どんな商品がお気に入り登録やカートに入れられているか、合わせ買いが多い商品の組み合わせは何かなど、さまざまなデータを取得できます。

取得したデータを分析すれば、ECサイトや商品そのものの改善、集客、CRM(Customer relationship Management:顧客関係管理)などにつなげることが可能です。

例えば、ユーザーがECサイトを訪れる前の行動を計測するツールとしてGSC(Google Search Console:グーグル・サーチ・コンソール)があります。GSCでは、検索キーワードやクリック率などのデータ計測が可能です。

また、GA4(グーグル・アナリティクス・フォー・プロパティ)では、リスティング広告のPV数やエンゲージメント件数など、ユーザーがECサイトで商品を購入するまでの経路をより深掘りして分析できます。

インターネットを介して接客を行う

インターネットを介して接客を行う

ECサイトはパソコンやスマートフォンを介して、インターネット上で接客を行うのが特徴です。商品陳列の手間や人件費がかかりにくい一方で、対面で接客が行えずユーザーとコミュニケーションが取りにくいというデメリットを抱えています。

例えば『〇〇の選び方』などのコンテンツを用意することで購買判断を持ってもらう、といったECサイトならではの切り口で、マーケティング施策を行うことが重要です。

また、ECサイトはインターネットにつながる場所ならどこでも買い物ができ、実店舗以上に商圏が広いです。言語対応や物流などの課題をクリアできれば、世界中のユーザーに対して商品を販売できます。しかし、商圏が広い分ユーザーが自然とECサイトを訪れる可能性は低いため、ユーザーを呼び込む施策を行う必要があります。

ECマーケティングを成功させるポイント

ECサイトのマーケティングを成功させるうえで重要なのは、アクセス数を増やすこと、CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)を向上させること、リピート顧客を増やして再購入してもらうことの3つです。3つのポイントごとに、行いたい施策の例をご紹介します。

1.アクセス数を増やす手法

アクセス数を増やす手法

前提として、ECサイトのアクセス数が少なければ売上の増加は見込めません。最初に取り組みたいのが、アクセス数を増やすためのマーケティング施策です。

集客数が増えるほどECサイトの認知度も高まり、商品を購入してもらえる可能性は上がります。アクセス数を増やすために取り入れたい施策の例をご紹介します。

広告出稿

広告出稿

ECサイトのアクセス数を増やす施策として、Web広告の出稿が挙げられます。出稿コストはかかりますが、設定や運用次第では比較的短期間で効果を見込めるのがメリットです。広告出稿には複数の方法があるため、代表的な種類と特徴を押さえておきましょう。

▼広告の種類と特徴
広告の種類 概要 特徴
リスティング広告 GoogleやYahoo!、Bingといった検索エンジンの索結果画面に連動して表示させる広告 特定のキーワードに興味があるユーザーに対して広告を表示するので、効果が出やすいとされている
ディスプレイ広告 Webサイトに表示されるバナータイプの広告やショッピング広告 画像や動画、スペックやレビューといった情報が表示させることで、商品・ブランドの認知度を高める効果が期待できる
SNS広告 InstagramやTwitterなどのSNSに出稿する広告 近年、Instagramのショッピング機能の利用や、ライブコマースのチャネルとしての利用が増えている
アフィリエイト広告 アフィリエイターのWebサイトに広告を掲載してもらう手法 クリック数や商品購入数に基づく成果報酬型のため、他の広告に比べて低リスクで運用できる

また、リスティング広告に該当するGoogleのショッピング広告というメニューでは、商品フィードを利用してテキストだけではなく、商品画像や価格、レビューなどの商品情報を表示させることでより購買ニーズの高いユーザーの集客が可能です。

SEO対策・コンテンツマーケティング

SEO対策・コンテンツマーケティング

SEO対策も、集客に有効な施策のひとつです。SEOは“Search Engine Optimization”の略で、日本語では“検索エンジン最適化”を指します。具体的には、検索エンジンで特定のキーワードが検索された際に、ECサイトを上位表示させるための対策です。

検索回数が多いキーワードで上位表示されている限りは、安定してユーザーの流入が見込めます。

また、商品ページ以外のコンテンツを作成するコンテンツマーケティングも有効です。ただし、SEO対策やコンテンツマーケティングは、広告出稿と異なり短期間で成果が表れる施策とは言えません。中長期的に継続して取り組む必要があります。ECサイトにおける具体的なSEO対策に関しては、以下の記事もご確認ください。

ECサイトでも必須! SEO対策の重要性とポイントを解説

SNS

SNS

自社の公式アカウントで、SEO対策を行って制作したコンテンツや、割引・キャンペーン情報などを投稿することで、想定していた層とは異なるユーザーへ自社の情報が届く可能性があります。さらに、そこから新規顧客の獲得につながることも期待できます。

ECサイトの集客におけるSNS運用については、以下の記事も参考にしてみてください。

EC集客に効果的なSNS運用とは?活用すべき理由も解説

2.CVRを向上させる手法

CVRを向上させる手法

ECサイトのアクセス数が増えても、ユーザーが商品を購入せずに離脱すると売上は伸びません。CVRを向上させる施策も重要です。

CVRとは、ECサイトにアクセスしたユーザーのうち、どれくらいが商品購入などの行動に至ったかを示す割合を指します。

CVRを向上させる施策の例としては、以下が考えられます。

LPの最適化

LPの最適化

ユーザーがECサイトを訪れた際に、最初に表示されるページがLP(Landing Page:ランディングページ)です。LPが使いにくかったり見にくかったりすると、ユーザーが離脱する傾向が高まります。

LPから他のページへの遷移や商品購入を促進するには、LPO(Landing Page Optimization:ランディングページ最適化)を行うことが重要です。

▼LPの最適化を行う際のポイント
  • ・Googleオプティマイズを使って、どのパターンのページが有効かを調べるA/Bテストを実施し、最適化を図る(Googleオプティマイズは2023年9月にサポート終了のアナウンスが出ています)
  • ・スマートフォンやタブレットからの閲覧に対応しているか、訴求したい内容が表現できているか、ユーザーが使いやすいかなどを意識する
  • ・シーズナリティのある特集ページか、並んでいる商品は魅力的かなどを踏まえてテーマを設定する

ECサイト機能の充実

ECサイト機能の充実

必要な情報が十分に含まれているだけでなく、見やすく使いやすいECサイトかどうかもポイントです。「商品を探しにくい」「購入ページまで何度もリンクを踏まなければならない」「決済方法が少ない」といったECサイトは、ユーザーが購入を途中で止めてしまう“カゴ落ち”につながる恐れがあります。

レコメンド機能によるおすすめ商品の紹介やレビューの充実、入力フォームの簡略化、決済方法を増やすなど、機能を充実させてECサイト全体の使い勝手を良くすることが重要です。

リマーケティング広告の配信

リマーケティング広告の配信

一度ECサイトを訪れたことがあるユーザーに表示させるインターネット広告を“リマーケティング広告”と呼びます。

自社のECサイトを見たことがあるユーザーは、少なからず自社の取扱商品やブランドに興味を持っている可能性が高いです。ECサイトでは閲覧した商品やそれに関連する商品を動的に配信することで興味があるユーザーに絞って広告配信することも可能で、CVR向上につなげやすいでしょう。

ただし、訪問したユーザーに対してアプローチするという仕様上、アクセス数が少ないECサイトでは効果が見込めない場合があります。すでに一定の集客ができているECサイトで取り入れるのがおすすめです。

リマーケティング広告の詳細やメリット・デメリットについては、以下の記事をご覧ください。

ECサイトにWeb広告を活用すべき理由とは?成功させるポイントまで解説

3.リピーターを増やす手法

リピーターを増やす手法

ECサイトの売上を安定させるには、リピーターを増やして定期的に商品を購入してもらうことも大切です。

リピーターを増やすマーケティング施策の例をご紹介します。

メールマガジンの配信

メールマガジンの配信

メールマガジン(メルマガ)やLINEでの配信は、ECサイトにおいてユーザーとのコミュニケーションを取る手段として有効です。

既存顧客に対して、新商品やセールの情報などを効率的に配信することができます。このとき、ユーザーが興味のない情報を送付しても、メールの開封や再訪問にはつながりにくいです。

購入履歴や属性、メールの開封率といったデータを蓄積して、パーソナライズされた内容のメルマガを配信する必要があります。

クーポン配布やポイント付与

クーポン配布やポイント付与

クーポンの配布や会員専用ポイントの付与も、リピート購入につなげやすい施策のひとつです。他のECサイトではなく自社のECサイトで購入するメリットを打ち出すことで、ユーザーの購入意欲を高められます。

「1年間購入履歴がない場合はポイント消失」「期間限定のクーポン使用で○○が20%オフ」など、使用期限を設けるのも、休眠顧客の復活やリピート率の向上に効果的です。

効果的なECマーケティング戦略に欠かせない要素

ご紹介してきた通り、ECマーケティングには多くの施策があります。どのような施策を行うのが効果的か、どんなユーザーをターゲットにすれば良いのかなど、ECマーケティングには専門的なノウハウが欠かせません。データを分析し、効果的な施策を策定し、実施できるスキルを持つ人材が不可欠です。

また、ECマーケティング施策を実施しても、すぐに効果が出るとは限らない点も理解しておくことが必要です。中長期的な計画と目標となるゴールを立てたうえで、そこから逆算してマーケティング施策を実施しましょう。

施策の見極め

施策の見極め

ECマーケティングを効果的に行うには、ABテストの実施やデータ分析を通して課題、何をどのように改善すれば良いか、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定することが重要です。

例えば自社で実店舗を構えている場合、店舗で人気の商品や新商品として売り出されている商品がECサイトで検索されやすい様にに掲載されているかや、店舗で併せ買いの相性が良い商品をECサイトではセット商品として販売するなどの取り組みが考えられます。

これらの施策を実施する際は、アプローチしたい層を事前に明確にしたうえで、効果的な施策を選択することも欠かせません。

ノウハウを持つ人材の獲得・育成

ノウハウを持つ人材の獲得・育成

ECマーケティングを行ううえでは、専門的なノウハウが求められます。そのため、ECマーケティングに関するノウハウを持つ人材の獲得・育成が重要です。

また、ECマーケティングでは、オートメーションツールをはじめとしたツールを導入することも一般的です。しかし、単にそれらのツールを導入しただけでECサイトの売上がアップするわけではありません。ECマーケティングを効果的に行うためのツールを効果的に活用するにもノウハウが求められます。

これらのノウハウを持つ人材の獲得・育成においては、人材育成の一環として社内でECマーケティングに役立つ資格の取得を促したり、コンサルティングを依頼したりすることが有効な方法として考えられます。

ECマーケティングの成功事例

AtoJでは、企業のECマーケティングも行っています。

企業のECマーケティングでは、分析・効果検証をはじめ、ECサイト内改善や広告運用支援、ABテストなど、売上アップにつながる様々な施策を行っています。

▼AtoJのECマーケティング事例

ECマーケティングの事例

ECマーケティングは戦略を練ることが重要

ECマーケティングは、市場や競合、自社ECのサイトの現状を踏まえて戦略を練り、段階に応じて適切な施策を行う必要があります。

そういった状況を把握したうえで、誰に(Who)どんな価値を(What)どのように訴求するか(How)を目的に沿って設定し、人・金・時間などの限られたリソースをどう配分していくかを決める必要があります。

また、効果的なマーケティング施策を実施するためには、ノウハウを持った人材が欠かせません。

「自社のリソースが不足している」「施策を行っても具体的な効果が見られない」といった場合は、マーケティング支援サービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

AtoJでは、コンテンツマーケティング支援サービスや分析・改善支援サービスなどをご提供しています。ECマーケティングでお悩みを抱えている方は、お気軽にご相談ください。

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