ECサイトを立ち上げる際に、必要となるのが「ECカート」です。ECカートの種類は大きく5つに分類され、それぞれにメリットやデメリットがあります。

そのため、なかには「どれを選んだらいいか分からない」というお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

そこで当記事では、ECカートの概要から、機能や種類、選ぶ際のポイントまでを分かりやすく解説します。

【目次】
■ECカート(ショッピングカート)とは
■ECカートの基本的な機能
■ECカートの種類を比較
・1.無料ASP
・2.クラウドEC
・3.オープンソース
・4.パッケージ
・5.フルスクラッチ
■ECカートを比較検討する際のポイント
・1.商材や販売形態との相性
・2.ECサイト構築・運用のコスト
・3.決済方法
・4.業態の違い(BtoBとBtoC)
・5.導入・集客サポート
■ECカートを比較検討し、自社に最適なものを選択する

ECカート(ショッピングカート)とは

ECカート(ショッピングカート)とは

ECカートとは、端的にいえば、ユーザーが選んだ商品を購入できる仕組みのことです。「買い物かご」や「ショッピングカート」と呼ばれることもあります。

ECカートには、無料のもの(売上に対する料率を支払う)と、有料のものがあります。いずれも、オンライン上の売買をスムーズにする役割を果たしています。

ECカートの基本的な機能

ECカートの基本的な機能

ECカートには、以下のような機能が備わっています。

▼フロント機能

  • ・TOPページ、商品一覧ページ、商品詳細ページに商品画像や商品情報を表示
  • ・カート(買い物かご)機能
  • ・マイページ機能
  • ・レコメンドや関連商品、ランキングの表示

▼バックオフィス機能

  • ・決済手続き(クレジットカードや後払い機能など)
  • ・注文管理、出荷管理
  • ・商品管理、在庫管理
  • ・顧客管理、会員ランク機能
  • ・分析機能(RFM分析やABテスト分析など)
  • ・CRM機能
  • ・クーポン発行やポイント管理 など

ECカートの種類を比較

ECカートには、以下のように大きく5種類があります。

  1. 1.無料ASP
  2. 2.有償ASP・クラウドEC
  3. 3.オープンソース
  4. 4.ECパッケージ
  5. 5.フルスクラッチ

1.無料ASP

無料ASP(Application Service Provider:アプリケーション・サービス・プロバイダ)は、初期費用や固定の月額費用が掛からないサービスです。

初期コストや固定ランニングコスト必要がないため、比較的検討のハードルは低いサービスです。ただし売上に対する料率が高いと売上が上がるほどに他製品より割高になる傾向もあります。

▼無料ASPのメリット・デメリットと概要

項目 詳細
メリット ・導入コストを抑えられる
・スピーディーに導入できる
・初心者でも始めやすい
デメリット ・拡張性・自由度が低い
・独自ドメインが利用できない(SEOに不利)
・サポートはヘルプデスクのみ
サービス例 ・BASE
・STORESなど
導入費用 無料~
導入期間 最短1日

無料ASPは、なるべく安価に、そして手軽にECサイトを構築したい事業者におすすめの方法です。

2.クラウドEC

クラウドECは、クラウド上のプラットフォームを用いてECサイトを構築できるサービスのことです。

ASPと形態が類似していますが、費用や機能性・拡張性に相違があります。

▼クラウドECのメリット・デメリットと概要

項目 詳細
メリット ・商品検索、CRM、分析などの機能性に優れている
・サービスによっては手厚いサポートがある
・高いセキュリティが担保されている
デメリット ・初期費用が一定かかる傾向にある
・固定ランニングコストが発生する
サービス例 ・MakeShop
・ecforce
・メルカート など
導入費用 100~300万円程度(デザイン費用によって変動)
導入期間 2~4ヶ月程度

クラウドECは、高いセキュリティやシステムの自動アップデートができるため、EC立ち上げから中堅規模の事業者まで、幅広く利用されています。

3.オープンソース

オープンソースは、インターネット上で無償公開されているソースコードを用いて利用できるECカートのことです。

ライセンスフリーのため、誰でも利用できます。

▼オープンソースのメリット・デメリットと概要

項目 詳細
メリット ・コストを大幅に削減できる
・ソースを編集すれば、自由にカスタマイズできる
デメリット ・高い専門性が求められる
・セキュリティ面に不安が残る(構築ベンダーのスキルや対応に依存するため)
サービス例 ・EC-CUBE
・Magento など
導入費用 500~1,500万円程度

オープンソースは、自社開発のリソースがあり、オリジナリティの高いECサイトを構築したい事業者に向いています。

4.パッケージ

パッケージは、ECカートに必要な機能がセットになっているサービスのことです。ベンダー(販売会社)が開発や販売を行っています。

機能やデザインなどカスタマイズ性が高く、自社専用の機能の追加も可能です。

▼パッケージのメリット・デメリットと概要

項目 詳細
メリット ・必要な機能が揃っている
・拡張性・カスタマイズ性が高い
・運営サポートが受けられる
デメリット ・一定の専門性が求められる
・初期費用・ランニングコスト・更新料が高い
サービス例 ecbeing
・Orange EC
・commerce21 など
導入費用 1,000万~数億円程度
導入期間 最短5ヶ月程度(カスタマイズによって変動)

パッケージは、メイン事業として本格的にECビジネスに参入したい事業者や、大規模なECサイトを構築したい事業者に向いています。

5.フルスクラッチ

フルスクラッチは、完全に一からオーダーメイドで構築するECカートのことです。数あるECカートのなかで最も自由度が高く、自社のニーズをすべて反映することができます。

▼フルスクラッチのメリット・デメリットと概要

項目 詳細
メリット ・自社のニーズに応じたECサイトを構築できる
・デザインやレイアウトなど、すべてを自由に設計・カスタマイズできる
デメリット ・多額な開発コスト、ランニングコストがかかる
・制作期間が長い
・トラブルもすべて自社で対応しなければならない
導入費用 数千万円~
導入期間 最短で1年程度

オーダーメイドのECサイトを構築したい事業者にとっては、フルスクラッチも選択肢の一つになるでしょう。

ECカートを比較検討する際のポイント

ECカートを比較検討する際のポイント

ここからは、ECカートを比較検討する際に確認しておきたい5つのポイントを解説します。

  1. 1.商材や販売形態との相性
  2. 2.ECサイト構築・運用のコスト
  3. 3.決済方法
  4. 4.業態の違い
  5. 5.集客サポートがあるか

1.商材や販売形態との相性

自社商材や販売形態との相性は、ECカートを比較検討する際に確認しておきたい重要なポイントです。なぜなら、たとえ高性能なECカートを導入したとしても、自社にマッチしていなければ、宝の持ち腐れとなってしまうからです。

たとえば、競合サイトが導入したことがあるサービスや、自社に類似した商材を扱ってきたECサイトが導入したサービスであれば、スムーズな導入・運用を実現できる可能性が高くなります。ECカートサービスの「導入実績」や「過去実績」を確認しておくのがよいでしょう。

また、販売形態との相性も欠かせません。予約販売、定期便、ギフト、店頭受け取りなどを求めるなら、それらに対応しているかの確認が必要になります。

加えて、単品通販とSKU(Stock Keeping Unit:在庫保管管理)が、数百・数千を超えるEC事業者の場合、検討する軸が変わってきます。検索性やカテゴライズ、商品カテゴリー別の配送設定などの優先度が高くなるでしょう。

このように、自社の商材や販売形態から、ECカートに必要な機能を明確にし、それに対応しているECカートを選択することを推奨します。

関連ページ: AtoJのECサイト制作実績ページはこちら

2.ECサイト構築・運用のコスト

ECサイト構築・運用にかかる必要なコストを算出しておくことも重要です。

ECカートには無料版と有料版があり、無料版は売上に対して手数料が発生します。有料版は、サービスによって初期費用・ランニングコストが大きく異なります。

また、ECカート以外にも、広告費、倉庫・配送費、人件費、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やチャットのツール費用などが発生します。トータルでどのくらい費用がかかるかを算出し、予算と照らし合わせてECカートを決めるのが良いでしょう。

関連記事: ECサイトにCRMを導入すべき理由とは?注意点や活用の流れを解説

3.決済方法

ECサイト決済方法を確認しておくことも重要なポイントです。多くの決済手段を用意することで、その分ユーザーにとっての利便性が向上します。

決済方法は、主にクレジットカード決済、コンビニ決済、代金引換決済、後払い決済、外部ID決済の5種類があります。各決済方法の簡単な特徴は、以下のとおりです。

▼決済方法の種類と特徴

項目 特徴
クレジットカード決済 ・利用者が多い
・即時決済のため、トラブルが起きにくい
コンビニ決済 ・未成年者をはじめ、クレジットカードを持っていないユーザーにも対応できる
・払込の遅延やキャンセルが発生する可能性がある
代金引換決済 ・不払いによるトラブルを回避できる
・手数料が高い
後払い決済 ・代金の未回収リスクが軽減する
・後払い決済事業者との契約で手数料が発生する
外部ID決済 ・入力時間の手間が省けるため、かご落ちを防げる ・ID決済の提供企業と契約する必要がある

特に効果的な決済方法は、Amazon Payです。Amazon Payは、Amazonアカウントに登録された個人情報(配送先住所・支払い情報)を使って、Amazon以外のECサイトでも簡単にログイン・決済を可能にします。そのため、ユーザーの入力ミスや手間を軽減できます。

その他にも、PayPayはキャンペーン時に利用率が高まる傾向があります。また、最近では、後払い決済(BNPL :Buy Now Pay Later)の利用も増えています。

4.業態の違い(BtoBとBtoC)

自社の業態がBtoBなのか、BtoCなのかによっても、選ぶべきECカートは異なります。これは、有名なカートシステムがBtoCを前提に作られていることが多いからです。

もし自社がBtoBの取引をメインに行っているのであれば、企業間取引ならではの機能が必要です。具体的には、企業情報管理、掛け売り、ボリュームディスカウントなどの機能が挙げられます。BtoBに対応したECカートのなかから比較検討すると、選定がスムーズになります。

ecbeing社が提供している『BtoB ECプラットフォーム』はこちら

5.導入・集客サポート

導入・集客サポートの有無からECカートを選ぶことも一つの方法です。

基本カートの提供のみで、サポートはメールのみといったサービスから、ECサイトを構築するまでは人的な支援を行ってくれるパターンと、構築後も支援を行ってくれるパターンがあります。構築後も支援を行ってくれる場合、どの領域までサポートしてもらえるかを確認しておくことが重要です。

システムは多機能・高機能でも使いこなせないと投資対効果が悪くなります。構築後もシステムの機能を使って業務効率の改善や売上を上げる為の施策を行う必要があります。機能を使うためのサポートが充実しているかなどは重要な検討ポイントだと言えます。

ECカートを比較検討し、自社に最適なものを選択する

ECカートを比較検討し、自社に最適なものを選択する

ECカートには大きく5種類があり、それぞれ導入費用や期間、特徴が異なります。

ECカートを選ぶ際には、自社商材や販売形態から必要な機能を明確にしましょう。その後、ECサイト構築・運営にかかるトータルコストを算出し、決済方法やサポートなどの観点から比較検討することをおすすめします。最終的に自社に最適なECカートを選ぶことが重要です。

もし「自社ECサイトを立ち上げたいけど、人的リソースやノウハウ的に厳しい」という場合は、ECサイト構築・運営まで一括で任せられる弊社コンサルティングサービスへの相談・依頼も検討してみてください。

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