多くのECサイト運営者は、売上の向上、リピート顧客の増加などの目標を掲げていることでしょう。そうした目標を達成するためには、顧客情報をしっかり管理し、顧客に適切にアプローチすることが重要です。

特に『LTV』や『F2転換』をひとつの指標としているEC事業者様も多いのでは無いでしょうか。商材や販売形態にもよって変わりますが、一般的に2回目購入して頂けるかどうかでLTVに大きな差が出ると言われています。

そのようなときに活用したいのが、顧客情報を一括管理できる「CRM(顧客関係管理)」です。

当記事では、CRMの概要、ECサイトにCRMを導入すべき理由、活用時の注意点、ECサイトでCRMを活用する際の流れなどについて解説します。

【目次】
■ECサイトでも使用されるCRMとは
■CRMとMAとでは何が違う?
■ECサイトにCRMを導入すべき理由
・1.顧客情報や顧客との関係を管理・最適化できる
・2.顧客へのアプローチを最適化できる
・3.マーケティングを戦略的に行える
・4.社内の連携を強化できる
■ECサイトにおけるCRM活用の注意点
・1.構築・運用にコストがかかりやすい
・2.運用の定着・成果が上がるまでに時間がかかりやすい
■ECサイトでCRMを活用する際の流れ
・1.顧客情報の取得
・2.顧客情報の解析
・3.顧客情報の活用
・4.効果測定と改善策の検討
■ECサイトでCRMを活用して、顧客アプローチの最適化を図ろう

ECサイトでも使用されるCRMとは

 ECサイトでも使用されるCRMとは

CRMとは、既存顧客との関係を深めていくマネジメント手法、および顧客関係に関するシステム・ツールのことです。「Customer Relationship Management」の略称で、日本語では「顧客関係管理」または「顧客関係性マネジメント」と訳されます。

CRMは、顧客満足度や顧客ロイヤルティ、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上を目指し、顧客を効率よくリピーター化・ファン化に導くことを目的としています。

ECサイトにおいては、外部システムやツールを導入するケースと、ECカートに付随するCRM機能を利用するケースがあります。

CRMとMAとでは何が違う?

 CRMとMAとでは何が違う?

CRMに類似したものにMA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)があります。MAとは、マーケティング活動の自動化・効率化を実現できるツールです。

▼CRMとMAの違い

項目 CRM MA
対象 既存顧客 見込み顧客
目的 ・顧客満足度の向上
・既存顧客のリピーター化・ファン化
・マーケティング活動の自動化・効率化
・見込み顧客の獲得・育成

MAでは、見込み顧客(リード)の獲得から育成(ナーチャリング)だけでなく、営業担当者がアプローチすべきリードの抽出などを行います。MAにはリード管理、スコアリング、シナリオ作成、LP(Landing Page:ランディングページ)やフォーム作成、メール文の作成・配信などの機能が備わっています。

このように、CRMでは既存顧客をターゲットにし、MAでは見込み顧客をターゲットにしているため、根本的に扱っている領域が異なります。ただ最近ではCRMでもシナリオ設計などの機能を実装しているツールも増えてきています。

ECサイトにCRMを導入すべき理由

 ECサイトにCRMを導入すべき理由

ここからは、ECサイトでCRMを導入すべき代表的な理由として、以下の4つを解説します。

  • 1. 顧客情報や顧客との関係を管理・最適化できる
  • 2. 顧客へのアプローチを最適化できる
  • 3. マーケティングを戦略的に行える
  • 4. 社内の連携を強化できる

1.顧客情報や顧客との関係を管理・最適化できる

CRMを活用することで、デモグラフィック情報(性別や年齢等)と、会員情報(会員ランク、保有ポイント等)、購買データ(買った商品、金額、時期、頻度等)、行動データ(お気に入り商品、ログイン回数等)を可視化し、その履歴情報を活用したコミュニケーションを取ることができます。
またEC会員と店舗会員を連携することで、より最適なCRM設計が可能になります。

2.顧客へのアプローチを最適化できる

顧客情報を効率的に管理できることで、顧客アプローチの最適化も実現できます。その顧客が商品を認知している段階なのか、購入を検討している段階なのか、購入済みなのかが把握できるようになり、おのずと取るべき対策が見えてきます。

たとえば、最終購入日から半年以上経過している休眠予備軍の既存顧客を対象に、一定期間購入していないユーザー向け特別クーポンや、顧客に合ったレコメンド商品などの情報を届ければ、再訪問のきっかけになるでしょう。

最終購入日(Recency)以外にも、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)といった切り口でセグメントし、最適なタイミングで情報を届けることも可能です。ニーズに合ったアプローチができれば、顧客満足度の向上やリピート数の増加が期待できます。

3.マーケティングを戦略的に行える

顧客情報が蓄積されると、ECサイトで購入した顧客の属性やリピート率、行動履歴などを把握できます。それらの情報を用いて、属性別の人気商品や購入率を分析することで、顧客ニーズまで明らかにすることも可能です。

たとえば、商品Aと一緒に買われる商品Bが分かれば、セット商品の開発やレコメンドに活用することも可能になります。このように、蓄積された顧客情報を活用することで、商品開発から販促まで戦略的に行うことができ、さらなる売上向上が期待できます。

4.社内の連携を強化できる

CRMを導入することで、社内の人が同じデータにアクセス可能になります。そのため、他部署や関係者に逐一情報共有をする手間が省けるうえに、部門間や部署間、拠点間の連携がより一層スムーズになるでしょう。

社内連携が強化されることで、業務の効率化するだけでなく、欠品による機会損失を防止することもできます。

ECサイトにおけるCRM活用の注意点

 ECサイトにおけるCRM活用の注意点

ここからは、ECサイトにおけるCRM活用時の注意点について解説します。

  • 1. 構築・運用にコストがかかりやすい
  • 2. 運用の定着・成果が上がるまでに時間がかかりやすい

1.構築・運用にコストがかかりやすい

CRMの導入では、ツール導入の費用はもちろんのこと、運用コストも発生します。そのため、ツールの初期・月額費用だけで判断することはおすすめしません。実際に今保持しているデータを活用してどの様な運用が想定されるか、その運用を社内でやるのか、外部に依頼するのかも想定しておきましょう。

2.運用の定着・成果が上がるまでに時間がかかりやすい

会員数を増やしたり、CRMの運用が定着するまでには、一定の時間がかかります。また、既存顧客に合わせて細かい施策を打っていくことになるため、効果がすぐ現れるわけではありません。

そのため、会員数が一定に達するまでは細かいセグメントは行わず、バースデークーポンや休眠掘起しといった鉄板シナリオと言われる施策から始めることをおすすめしております。

おススメの鉄板シナリオ

  • ・かご落ちフォロー
  • ・会員登録後、未購入者へのフォロー
  • ・初回購入後のフォロー
  • ・お誕生月クーポン配布
  • ・休眠顧客へのフォロー
  • ・保有ポイント期限のお知らせ
  • ・会員ランクのお知らせ(今月後いくら購入でランクアップ等)
  • ・アプリやLINE連携促進
  • CRMメールテンプレート
    配信メールサンプル

ECサイトでCRMを活用する際の流れ

 ECサイトでCRMを活用する際の流れ

ここからは、ECサイトでCRMを活用する際の流れについて解説していきます。主な流れは以下の4つに分けられます。

  • 1. 顧客情報の取得
  • 2. 顧客情報の解析
  • 3. 顧客情報の活用
  • 4. 効果測定と改善策の検討

1.顧客情報の取得

まず、新規顧客がECサイトで商品購入した際、顧客情報を取得します。

その後、取得した顧客情報は、購入履歴や購入頻度、閲覧履歴などの情報と紐づけて、CRMに蓄積されていきます。

2.顧客情報の解析

次に、顧客情報を分析し、セグメント化します。セグメントとは、属性や特徴が類似している顧客をグループ分けすることです。

顧客を分類する切り口は自由ですが、一般的な分類方法は以下の4つです。

項目 分け方の詳細
デモグラフィック
(人口動態変数)
・年齢
・性別
・家族構成
・職業
・年収
・子供の年齢(月齢) など
サイコグラフィック
(心理的変数)
・価値観
・趣味嗜好
・信念
・興味関心
・ライフスタイル など
ジオグラフィック
(地理的変数)
・国
・都市
・地域
・人口
・文化 など
ビヘイビアル
(行動変数)
・購入場所(チャネル)
・購入商品
・購入日時
・購入回数・頻度
・閲覧Webページ
・サイト滞在時間 など

昨今では、インターネットの普及や顧客ニーズの多様化などに伴い、個々のニーズに対応できる「サイコグラフィック(心理的変数)」や「ビヘイビアル(行動変数)」が重要視される傾向があります。

また、会員登録の時間帯や、メールマガジン・DMの開封時間帯など、顧客の活動時間に合わせてセグメントすることで、クリック率や開封率を高めることも可能です。

3.顧客情報の活用

次に行うのが顧客情報の活用です。セグメントや分析した顧客データを用いて、顧客に合わせたアプローチを行います。アプローチの手段としては、SNSやメールマガジン、DM、アプリのプッシュ通知などが挙げられます。

アプローチをうまく使い分けることで、顧客の満足度が向上し、リピーターへと育てていきます。

4.効果測定と改善策の検討

顧客に合わせたアプローチを行った後は、効果測定を行います。一定期間ごとに購入率やリピート率、売上幅などを計測することで、狙いどおりの効果を得られているかを確認します。

効果を検証したら、結果次第で改善策を検討しましょう。その施策を実行し、分析や検証、改善を繰り返しながら、CRMの効果を最大化させていきます。うまくPDCAサイクルを回していけば、リピーターの増加や売上の向上に貢献します。

ECサイトでCRMを活用して、顧客アプローチの最適化を図ろう

ECサイトにおいてCRMを導入する際、初期費用やランニングコストが発生します。また、CRMで成果が上がるまでや、社内で運用が定着するまでに時間がかかってしまう側面もあります。導入するにあたっては、短期的に成果を求め過ぎないことが大切です。

これらの注意点はあるものの、CRMを導入することで、顧客情報を効率的に管理できるようになります。顧客に対するアプローチが最適化でき、1on1の理想的なコミュニケーションを実現できるでしょう。うまくアプローチすれば、休眠顧客や既存顧客を、リピーター・ファン化できる可能性も秘めています。

ECサイトを立ち上げたばかりの方や、運用体制が整っておらず不安を抱えている方は、興味関心がありましたら、弊社のECコンサルティング支援サービスの利用を検討してみてください。

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