昨今、新しいEC(electronic commerce)サイトのカタチとして「メディアEC」が注目されています。メディアECは、競合ECサイトが増えた現状において、知名度や売り上げを向上させる効果として期待されています。

しかし、「メディアECの形態がいまいち掴めていない」「自社で導入するにはどうしたらいいのか分からない」など、ECの担当者でも悩んでいる方が多いはずです。

そこで当記事ではメディアECの基本的な知識や取り組むべき理由、メディアECの始め方などを解説します。

【目次】
■今注目のメディアECとは? メリット・デメリットや取り組むべき理由
■メディアECと一般的なECサイトの違い
■3つの種類に分けられるメディアEC
・1.記事コンテンツ型
・2.デザイン・写真・動画などの視覚コンテンツ特化型
・3.SNS連動型
■メディアECの始め方
・KGI・KPI設定
・発信コンテンツの設定
・コンテンツ制作体制の構築
・コンテンツの分析・検証・改善
・激化するEC市場をメディアECによって勝ち抜く

今注目のメディアECとは? メリット・デメリットや取り組むべき理由

ノートパソコンでWebサイトを制作

メディアECとは、これまで商品・サービスの販売に特化していたECサイトを、1つのWebメディアとして運営する方法です。メディア化したECサイトでは、商品情報や決済機能以外にも、さまざまなコンテンツをユーザーへ提供します。

項目 詳細
メリット ユーザーのファン化によってリピーターが増加する
ユーザーの購買意欲を育てられる
デメリット 運営に労力・時間がかかる
効果が出るのに時間がかかる

競合ECサイトが増えてきた昨今、他社との差別化や自社ブランディングが難しくなりました。

また、近年のユーザーニーズとして、「良い商品を購入したい」「自分にぴったりの商品がほしい」といった、商品の質・多様性を重視する傾向が見られます。

そのため、「数ある競合他社のなかから見つけてもらう」「商品の魅力を深く知ってもらう」などの目的を達成するため、メディアECに取り組む企業が増えています。

メディアECと一般的なECサイトの違い

従来のECサイトでは、ユーザーは「欲しい商品を探す」「商品を購入する」といった限定的な目的のみで訪れることが一般的でした。一方、メディアECの場合、ユーザーにショッピング以外にもさまざまな知識・体験を提供できます。

項目 メディアECサイト
運営意図 商品・サービスの販売、集客力の強化、ユーザーのナーチャリング、自社のブランディング訴求など
来訪目的 ショッピング、情報収集、エンタメなど
コンテンツ 商品・サービスの情報、お役立ち情報や企画など
主な施策 SEO、Web広告、SNS、オウンドメディア、動画、イベント、キャンペーン企画など

3つの種類に分けられるメディアEC

メディアECには「記事コンテンツ型」「視覚コンテンツ特化型」「SNS連動型」の3種類に分けられます。

1.記事コンテンツ型

Webサイトで記事を執筆しているイラスト

コンテンツ型とは、ブログ・コラム記事などを定期的に投稿し、ユーザーに有益な情報を発信する手法です。ECサイト内で投稿する、またはECサイトとは別でオウンドメディアを立ち上げるなどの方法が一般的です。

コンテンツを継続的に投稿する労力がかかるものの、Web上に資産として残るのが記事コンテンツ型の大きなメリットです。さらに投稿内容を商品紹介にするか、知識・ノウハウを重視するかによって、2つパターンに分けられます。

商品紹介がメイン

ECサイト内で販売する商品に関する特徴・魅力・使い方・利用シーン・開発秘話など、商品紹介をメインにした記事コンテンツを投稿します。ユーザーの購買意欲を高めやすいのが、この型のメリットといえます。

実際に商品を購入したユーザーの口コミ・レビューを載せるなど、ユーザー参加型コンテンツにするのも1つの方法です。

幅広い知識やノウハウ提供がメイン

「秋の味覚を美味しく食べるコツ」「春服の着こなしのポイント」など、販売商品やサイトの方向性に沿った幅広い知識・ノウハウを提供するコンテンツを投稿します。

ショッピング以外の目的でアクセスしたユーザーにもリーチできるのがメリットです。

2.デザイン・写真・動画などの視覚コンテンツ特化型

スマホとノートパソコンのイラスト

デザイン・写真・動画関係のコンテンツをメインとして提供し、ユーザーへ視覚的にリーチする手法です。アパレルや産業機器関連の企業でよく見られます。

テキストよりも視覚情報のほうが商品の魅力を伝えやすかったり、デザイン性による高級感・美麗さ・独創性のブランディングを目指したりなどの場合におすすめです。

現在では動画から商品を直接購入できる「動画コマース」という新しい通販手法も誕生しています。

3.SNS連動型

ノートパソコンにフォロワーとつながり

Instagram、Facebook、Twitterなどと連動し、SNSの拡散力を使った商品宣伝・ブランディングを行うのがSNS連動型です。企画やコンテンツ投稿を行ってフォロワーを増やしつつ、一気にコンテンツを拡散させるバズを狙います。

昨今ではスマートフォンの普及やSNSの流行りもあり、SNSの情報が若者以外の幅広い年代の方にまで届くようになりました。SNSから潜在顧客へアプローチしてファンを獲得し、ECサイトへ誘導して商品購入やリピートへつなげます。

メディアECの始め方

「いいね」やフォロワー数が表示された風景

ここからはメディアECの作り方を流れに沿って解説します。おおまかな流れは次の通りです。

  • ・KGI・KPIの設定
  • ・発信コンテンツの設定
  • ・コンテンツ制作体制の構築
  • ・コンテンツの分析・検証・改善

KGI・KPI設定

始めに、メディアECの運営で達成すべきKGIを設定します。目標となるKGIが明確でなければ、KPI・投稿コンテンツ・運用方針の方向性がブレて、失敗につながります。

集客したいのか、売上を出したいのか、ブランディング重視なのかなど、マーケティングの方向性を明確に決めておきましょう。

次に、KGIを達成するためのKPIも設定します。新規ユーザー獲得であれば「セッションやUUなど◯%以上達成」、売上であれば「訪問者数×CVR×平均購入額の数値〇〇万円達成」などが挙げられます。

ECサイトにおける代表的な3つのKPI例と検証方法

発信コンテンツの設定

発信するコンテンツの内容は、メディアECにおける重要な位置づけです。まずはKGI・KPIの達成に向けたコンテンツの方向性やターゲットを絞ります。

  • ・ターゲットにするユーザーの年齢層、性別、ニーズ、属性など
  • ・読み手をより具体化させるペルソナ設定
  • ・発信するコンテンツの内容
  • ・遷移させたいページや商品等の選定

上記で検討した内容を基に、どのようなメディアECを運営するかを決めます。

コンテンツ制作体制の構築

コンテンツの品質を最優先にしつつ、継続的に投稿できるコンテンツ制作体制を整えます。

ライター・デザイナー・動画編集者・フォトグラファー・インフルエンサーなどのクリエイターや、ディレクター、監修者、弁護士などが、必要人材として挙げられます。

多くの場合、メディアECを進めるにあたっては、制作会社や外部クリエイターへの外注を活用するのが一般的です。コンテンツの制作実績やサポート体制、得意分野を比較検討し、自社の方向性と合う依頼先を選定しましょう。

コンテンツの分析・検証・改善

投稿したコンテンツについて分析・検証を行い、洗い出した問題点を改善していきます。

原因例 改善例
検索順位が上がらない 検索キーワードの再設定、記事のリライトなど
アクセスは増えたが直帰率が高い 内部リンクや記事カテゴリ分け、購入までの導線の見直し、掲載動画・写真の変更など
SNSのエンゲージメントが悪い フォロワーの属性分析、投稿タイミングの見直し、フォロワーとのコミュニケーション頻度の変更など

メディアECは効果が出るまで時間がかかる手法であるため、原因と改善を把握してPDCAを回していきましょう。

激化するEC市場をメディアECによって勝ち抜く

激化するEC市場の競争を勝ち抜くには、他社と差別化し、自社独自の価値観を提供できるメディアEC運営がカギといえます。

メディアECの成功によって売上・知名度が急増した企業も増えてきており、今後はECサイトのメディア化がより広まると予想されます。

メディアECにはライティングやデザイン、SEOなどの専門知識・経験が求められることから、ECコンサルなどのサービスを提供しているECサイト構築会社へ相談するのがおすすめです。

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