ECサイト運営で成果を出すためには、KPIを用いた目標設定や状況分析が効果的です。

企業のWeb・EC担当者のなかには「ECの売上を上げたいが何から着手したら良いか分からない」「KPIの設定方法がイマイチ分かっていない」という方も多いのではないでしょうか。

また、新しく自社でECサイトを立ち上げるにあたり、計画的に売上を上げていくためのKPIの設定方法を模索している企業担当者もいるはずです。そこで本記事では、ECサイトにおけるKPIの重要性や関連指標との違い、KPI設定のポイント、設定後に求められる対応などを解説します。

【目次】
■WebサイトにおけるKPIの概要
■なぜECサイトではKPIが重要であり、担当者が押さえておく必要があるのか
・達成すべき目標を明確化するため
・ECサイト運営の進捗状況を把握するため
・チームで共通認識を持ってECサイト運営を行うため
■担当者が混同しやすい各指標と意味
■KPIを設定するポイントは『SMART』に従うこと
・1.Specific(具体的)であること
・2.Measurable(計測可能)であること
・3.Achievable(達成可能)であること
・4.Relevant(最終目標と関連した指標)であること
・5.Time-bounded(期限が明確)であること
■サイト運営で必ず目標設定したい代表的なKPI例
・訪問者数(UU・セッション・PV)
・CV・CVR
・平均客単価
■KPI設定後に実施するべき『KPIツリー』の考案
・KPIツリーによって得られる効果
■KPIの検証や改善にはツール類の活用が効果的
■KPIを設定してより良いECサイト運営を実現

WebサイトにおけるKPIの概要

KPIの文字

ECサイトにおけるKPI(Key Performance Indicator:ケーピーアイ)とは、PV(ページビュー)やセッション、商品ページ遷移率、カート投入数、購入完了数、会員数、ROAS(ロアス)といったパフォーマンスを定点観測する指標のことです。日本語訳では『重要業績評価指標』とも呼ばれます。

例えば、「月間売上1,000万円」という目標に対して達成すべき訪問数やCVR(コンバージョン率)などがKPIにあたります。

なぜECサイトではKPIが重要であり、担当者が押さえておく必要があるのか

Web担当者がパソコンに向かって協議する

ECサイトでは、一般的な企業HPと違って達成するべき目標が定められています。その目標を達成するためにはKPIの設定が必要不可欠です。

達成すべき目標を明確化するため

KPIは日々のECサイト運営における達成目標を明確化するうえで重要です。

例えば、「訪問数を3カ月で30%増やす」といった具体的なKPIを設定することで、施策方針やその手法を明確に決められます。

ECサイト運営の進捗状況を把握するため

KPIは日々のECサイト運営の状況把握にも役立ちます。

例えば、「訪問数を3カ月で30%増やす」といったKPIに対して1カ月目や2カ月目の状況を確認することで、効果のある施策や改善点などが可視化されます。

チームで共通認識を持ってECサイト運営を行うため

KPIはチームで活動するうえでも大切な役割を担います。

KPIを設定することで、担当者の主観的な判断ではなく、客観的な指標を基にチームで方向性を合わせてECサイト運営が行えます。

担当者が混同しやすい各指標と意味

KPIと同じく、Webサイトのパフォーマンスを計る指標がいくつかあります。

特にチームで行うECサイト運営では、担当者間で頻繁に使用するワードといっても過言ではないのでしっかり覚えておきましょう。

▼各指標の早見表

指標 意味 ECサイトにおける例
KGI 事業の最終目標 売上高
KSF KPI達成に向けた具体的なアクション SNS集客の強化、ブランドの認知など
SLA サービスの品質保証を行う水準 商品の不具合があった際の返品交換の保証範囲など
LTV 顧客が一生涯を通じて企業にもたらす利益の総和 顧客が購入した商品などの総利益

KGI
KGI(Key Goal  Indicator:ケージーアイ)は、最終目標のことです。『重要目標達成指標』とも呼ばれます。ECサイトにおいては、売上高がKGIとして設置されているケースが多いようです。

KSF
KSF(Key Performance Indicator:ケーエスエフ)は、重要成功要因のことです。KPI達成に向けた具体的なアクションを指します。例えば、ECサイトの「訪問数を3カ月で30%増やす」といったKPIに対して「SNS集客を強化する」施策アクションがKSFにあたります。

SLA
SLA(Service Level Agreement:エスエルエー)は、サービス品質保証を指す用語です。ECサイトにおいては、商品の不具合があった際、返品交換の保証範囲がSLAの代表例として挙げられます。

LTV
LTV(Life Time Value:エルティーヴィー)は、生涯顧客価値のことです。例えば、ある顧客が自社のECサイトで3万円の商品(粗利益2万円)を合計6回購入した場合、LTVは12万円(粗利益×購入総回数)と計算します。

KPIを設定するポイントは『SMART』に従うこと

階段になっている文字のSMART

ECサイトでKPIを設定するポイントは、SMARTの原則に従うことです。SMARTとはSpecific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-boundedの5つから構成されています。

1.Specific(具体的)であること

KPIは誰が見ても同じ解釈できるよう、具体的に目標設定することが重要です。

例えば、「購入率を大幅に上げる」といったKPIでは、担当者によって捉え方が異なってしまいます。「購入率を2%から5%に上げる」のように具体的に設定をします。

2.Measurable(計測可能)であること

KPIは計測可能であることもポイントです。KPI設定後は達成状況を追っていくことになるため、計測できる指標を選定します。

3.Achievable(達成可能)であること

KPIは達成可能であるか確認したうえで設定します。

大きな目標を掲げることも重要ですが、「売上高を1年で50倍にする」といった目標は現実的とはいえません。従業員のモチベーションを損なわないためにも、達成可能なレベルのKPIを設定することがポイントです。

4.Relevant(最終目標と関連した指標)であること

KPIは最終目標であるKGIを達成するための指標です。そのため、KGIとの関連性を持たせることも重要です。

例えば、KGIが「売上1,000万円」と掲げた場合、KPIが広告費の削減だと適切な目標設定とはいえません。KGIの達成に貢献するKPIを設定します。

5.Time-bounded(期限が明確)であること

KPIでは期限を明確化することもポイントです。

「いつまでに達成するか」を設定しておくことで、その日程から逆算した行動が生まれます。「3月31日までにCV数を100件獲得する」といった明確な期限を設定することが重要です。

サイト運営で必ず目標設定したい代表的なKPI例

モニターの中にあるサイトデータ

ECサイトにおける代表的なKPIは主に以下3つの項目が挙げられます。

  • 1.訪問者数(UU・セッション・PV)
  • 2.注文率(CVR)
  • 3.客単価

これらはECサイトのKGIである売上高を決定づける3大要素です。それぞれのKPIを以下で解説します。

訪問者数(UU・セッション・PV)

訪問者数は、ECサイトにどれだけユーザーが流入したのかを表す指標です。具体的には以下の3つの指標があります。

項目 詳細
UU(ユニークユーザー) サイトに訪問したユーザー数
セッション 一定期間にユーザーがサイトに訪問した回数
PV サイト内のページが閲覧された回数

上記3項目は混同することが多いですが、それぞれ異なる指標です。

また、訪問者は大きく「新規訪問者」と「リピーター」に分かれます。訪問者数を増やすための施策のなかでも新規顧客とリピーターで異なるのが一般的です。

新規訪問者の獲得をする例

  • ・自然検索からの流入を増やすためのSEO対策
  • ・広告からの流入を増やすための広告施策
  • ・SNSから流入を増やすためのSNS集客

リピーターを獲得する施策例

  • ・メールマガジンやSNSでの情報配信
  • ・会員ランク制度によるリピート購入促進
  • ・ポイントやクーポン制度の導入

訪問者数という大きな枠のなかで、それぞれのKPIを設定したうえでKGIを達成するための施策を行います。

CV・CVR

CV・CVRは実際にECサイトで購入したユーザー数や割合のことです。

訪問者数 CV CVR
300セッション 15件 5%

例えば、訪問者数300セッションのうち、ECサイトで購入した人が15人いた場合はCVRは5%です。

計算式
15件(CV)÷300セッション(訪問者数)×100=5%(CVR)

CVRを改善するためには商品自体の魅力を高めることも重要ですが、ユーザーが購入しやすい仕組みを作ることもポイントです。具体的には、以下のような施策が考えられます。

  • ・商品購入までのサイト導線をより簡素でわかりやすくする
  • ・商品詳細ページ内のコンテンツを強化する(購買判断が付く状態を目指す)
  • ・タイプの違うオファーを数パターン試してみる(ABテスト)

平均客単価

平均客単価は、ユーザー1回あたりの購入金額です。例えば、ユーザーAが5万円の商品を、ユーザーBが3万円の商品を購入した場合、平均購入単価は4万円です。

購入単価を上げるためには、アップセル施策(※1)やクロスセル施策(※2)が有効です。また、「あと○○円で送料無料となります」のように追加購入のインセンティブをユーザーに与えて平均客単価の向上を目指します。

※1・・・より高価格帯の商品をユーザーにおすすめする施策
※2・・・購入商品と関連のある商品を提案し、セット購入を促す施策

KPI設定後に実施するべき『KPIツリー』の考案

KPIを設定する目的は、ECサイト運営における目標を達成することです。

目標達成のためには、KPI設計後に定期的な状況確認や分析を行う必要があります。適切な状況確認や分析を行ううえでは、KPIツリー(※)を作成することが効果的です。

※・・・最終目標のKGIを起点に、ロジックツリー構造でKPIを分解して図式化したもの

KPIツリーによって得られる効果

KPIツリーを作成することで、主に以下3点の効果を得られます。

効果1.課題の原因を深掘りしやすくなる
ロジックツリー構造でKPI指標を細分化することで、課題を明確にし、その課題に対しての打ち手、ゴールと評価を考えるのに役立ちます。

効果2.各チームや担当者が自分事化できる
KPIの要素をチームレベルや担当者レベルまで細かく分類することで、ECサイトの運営に関わる各チームや担当者が自分事として捉えることが可能です。

効果3.スピーディな施策につながる
KPIの要素を担当者に振り分けることによって、「誰が責任を持って担当するか」が明確化され、スピーディな施策の実行につながります。

また弊社ではKPIツリーに加え、OGSMシートという枠組みを活用しています。目的、ゴール、戦略、評価を明確にすることで対策する優先順位も立てやすくなります。

KPIの検証や改善にはツール類の活用が効果的

キーワードリサーチするロボットイラスト

KPIの検証や改善には、以下に挙げるようなツール類の活用がおすすめです。

アクセス解析ツール
ECサイトへの訪問数や滞在時間を解析する際はGoogle AnalyticsやGoogle Search Consoleなどのアクセス解析ツールが有効です。GA4への移行により、より精度の高いKPIの設定や分析が可能になりました。どんなことが出来るかや操作感などは覚えておくべきツールといえます。

カゴ落ち対策ツール
ECサイトではカゴ落ち(※)をいかに防ぐかによって売上高に大きく影響します。

※・・・商品をカートにいれたにもかかわらず、購入にいたっていない状況のこと

CRM・MAツール
CRM・MAツールでは、顧客を購入履歴や会員ランクなどでセグメントしそれぞれに適したメールやLINE、広告などのコミュニケーション設計・実行が可能になります。

Web接客ツール
Web接客ツールは、ECサイト上のユーザーの回遊状況を解析して、ユーザーに応じてチャットボックス・チャットボットなどを表示させます。購入時の不安を払拭したりすることで購入完了率を改善できた事例などがあります。

KPIを設定してより良いECサイト運営を実現

ECサイトを効果的に運営するためには、KPIを用いた目標設定や状況分析が重要です。日々のECサイト運営においては、KPIツリーなどを用いてチームレベルや担当者レベルまで要素を細分化し、実行に移すことがポイントとなるでしょう。

また、実行を通じて見えてきた数値に対してツールを活用しながら分析を行い、改善につなげる取り組みは不可欠です。KPIを用いて適切な目標設定や分析を行い、ECサイト運営の成果を高めていきましょう。

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