ECサイトの構築方法と各プラットフォームの特徴を初心者にもわかりやすく解説

実店舗に加えてECサイトを構築し、販路を拡大したいと考えている担当者の方は多いのではないでしょうか。ECサイトを構築する目的には、オンライン販売を始めたい、モール出店に加えて自社ECサイトも運用したいなど、さまざまなことが考えられます。
しかし、ECサイトの構築方法は複数あり、それぞれどのようなメリットがあるのかわかりにくいかもしれません。
ここでは、ECサイトの構築方法ごとのメリットや費用感、構築方法を決める際に確認したいポイントなどをご紹介します。

【目次】
■ECサイトの構築方法ごとの特徴
・モール型
・無料ASP
・有料ASP
・オープンソース
・パッケージ
・クラウドEC
・フルスクラッチ
■ECサイトの構築方法の選び方
・費用感
・セキュリティー対策
・サポート体制
・長く使えるかどうか
■自社に適した構築方法を考えよう

■ECサイトの構築方法ごとの特徴

 ECサイトの構築方法ごとの特徴

ECサイトの構築方法には、ASPやパッケージ、クラウドECなど、多くの種類があります。事前にそれぞれの費用感や特徴を確認して、自社に適したサービスを選ぶことが重要です。
まずは、構築方法ごとの特徴を確認しておきましょう。

・モール型

ネット上にあるショッピングモールの中に、出店もしくは出品する方式が「モール型」で、日本ではAmazonや楽天市場、ヤフーショッピングなどが有名です。
費用感は高くても数万円程度で、準備が滞りなく進めば構築に時間もかかりません。知名度の高いモールは集客力に優れているため、ECサイトを開設した直後から売上が見込めます。

ただし、出店料や決済手数料といったロイヤリティが発生し、同業他社が同じモールに出店している場合は価格競争に陥りやすいです。
また、商品を購入したユーザーが「Amazonで○○を買った」と認識するケースが多く、ショップやブランド名の認知度向上につなげにくい点もデメリットといえます。
顧客情報もモール側が所有するため、顧客情報を基にしたマーケティング施策の実施も困難です。

・無料ASP

ASPは「アプリケーション・サービス・プロバイダ(Application Service Provider)」の略称です。具体的には、ネットワークを通じて提供されるサービス、またはサービスを提供する事業者のことを指します。
ECサイトにおけるASPとは、カート機能や決済機能といったECサイトに最低限必要な機能を、インターネット上で提供するサービスのことです。BASE(ベイス)やSTORES(ストアーズ)、カラーミーショップなどが有名な無料ASPにあたります。

サイト制作費や初期費用などは無料で、月額費用も基本的には商品販売時の手数料しかかかりません。構築に必要な期間も1週間程度と短めです。システムの保守運用やバージョンアップはベンダーが行うため、専門知識がなくても導入できます。

ただし、ASPは全社共通のシステムを使用することから、外部システムとの連携やデザイン面でのカスタマイズ性が低く、独自のECサイトを構築するのは困難です。
予算に限りがある個人事業主や、ECサイトの年商が少ない中小企業の方に適しています。

・有料ASP

ASPの中には、有料でシステムを提供しているものもあります。MakeShopやFutureShop、Shopifyなどが有名です。
有料とはいえ、月額は数千円から数万円低度と、比較的少額から運用できるのが魅力です。システムやセキュリティーのアップデート、サーバー管理といった保守点検作業はベンダーが行い、外部ツールとの連携やサポートなど、機能面では無料ASPより充実しています。

しかし、有料ASPなら自由にECサイトを構築できるわけではありません。カスタマイズ性やデザインには制約があるため、事業規模の拡大に応じて、拡張性に優れたプラットフォームへの乗り換えが必要になります。
予算に余裕がある個人事業主や、試験的にECサイトをオープンしてみたい法人などにおすすめです。

・オープンソース

オープンソースは、無償で公開されているソースコードを使ってECサイトを構築する方法です。カスタマイズが自由に行えるので、システム連携やデザインなどの自由度に優れています。

一方で、バージョンアップや障害発生時の対処は自社で行うのが一般的で、社内に高い技術力を持った人材がいない場合は運用が難しいです。
また、ソースコードが公開されているということは、セキュリティー上の穴もわかりやすいということです。セキュリティー対策は万全に行う必要があります。

日本ではEC-CUBEやMagentoなどが有名ですが、オープンソースのCMS(コンテンツ管理システム)である「WordPress」を使ったECサイトの構築も可能です。

・パッケージ

カート機能や受発注管理、顧客管理など、ECサイトに必要な機能がパッケージ化されたシステムを基にして、企業ごとに必要な機能を個別で追加していく方式です。ecbeingやEC-Orange、Commerce21などがパッケージにあたります。

他の構築方法よりも機能やデザインなどのカスタマイズ性、システム連携の柔軟さなどに優れていて、ベンダーによるサポートも充実している点が魅力です。
必要な機能はカスタマイズできるものの、初めからパッケージに含まれている機能が充実しているほど、構築にかかる期間は短くなります。

機能性に優れている一方で、初期費用や月額の保守費用、バージョンアップ時の費用負担など、コスト面はASPなどに比べると高くなりがちです。
年商1億円を超えるような、大規模ECサイトに向いた構築方法といえます。

・クラウドEC

インターネット上のプラットフォームを利用して、ECサイトを構築する方法です。システムはベンダーによる自動アップデートが行われ、システム連携やカスタマイズ性にも優れています。ASPとパッケージのメリットを掛け合わせた方式と考えるとわかりやすいかもしれません。メルカートやebisumartがクラウドECにあたります。

ASPとは異なり、全社で共有する部分の上に会社ごとのカスタマイズ領域を設けており、自動アップデートとカスタマイズ性の高さを両立しています。
ただし、ベンダーによってはカスタマイズやシステム連携が難しい場合があります。また、自社でサーバーを運用する「オンプレミス」方式が必須の場合は、導入が難しいでしょう。

・フルスクラッチ

フルスクラッチは、1から完全にオリジナルのECサイトを構築する方法です。数ある構築方法の中でも自由度は最も高く、システム連携やデザインなど、自社が必要とする要件をすべて取り入れることができます。

ただし、サイト構築までに多大な時間とコストがかかるうえに、システムの定期的な改修作業も欠かせません。そのため、採用しているのはZOZOTOWNやユニクロといった国内でも有数の大規模ECサイトに限られます。

また、近年はパッケージやクラウドECのカスタマイズ性が高くなり、フルスクラッチを採用するメリットが薄れてきています。
フルスクラッチを採用する場合は、構築費用をかけただけの効果が見込めるかどうかの検討が重要です。

■ECサイトの構築方法の選び方

 ECサイトの構築方法の選び方

ECサイトの構築方法にはさまざまな手法がありますが、具体的にどのような面から選定を行えば良いのでしょうか。ECサイトの構築方法を考える際の基準を、4つご紹介します。

・費用感

構築方法を考える際に最も重要なのがコスト面です。新規でECサイトを立ち上げる場合は、ECサイトの売上の見通しと、初期費用や月額費用といったコストを鑑みて、自社に最適なサービスを見つける必要があります。
ベンダーや要件などによって具体的な数字は異なりますが、各構築方法の費用感を大まかにまとめると、以下のようになります。サービス選定の参考にしてみてください。

【ASP】
初期費用:無料
月額:数千~数万円
サービスによっては、売上の数パーセントまたは購入1件あたりで課金が発生します。

【オープンソース】
初期費用:無料~数百万
月額:数万~

【パッケージ】
初期費用:数百万~
月額:数十万~

【クラウドEC】
初期費用:数百万~
月額:数万~

【フルスクラッチ】
初期費用:数千万~
月額:数十万~

・セキュリティー対策

ECサイトの構築においては、セキュリティー面の確認も重要です。氏名や年齢、クレジットカード情報といった顧客情報が流出した場合、企業の信用は大きく失われます。損害賠償やサイト運営の停止により、多額の損害が発生することも考えられます。

特に、オープンソースはセキュリティー面に不安を抱えやすいため、対策が必須です。他の構築方法の場合も、「絶対に問題が発生しない」と言い切ることはできません。
どのようなセキュリティー対策が行われているかを、システムやインフラなどを含めて多角的に確認しておくことをおすすめします。

・サポート体制

ベンダーのサポート体制の確認も重要です。サポートの例としては、プラットフォームの提供やシステム構築、カスタマイズ、売上アップに向けたマーケティング支援などが挙げられます。
ベンダーごとにどこまで対応できるのかは異なり、カートによってはデザイン制作を別の会社に頼む必要がある場合もあります。
特に、ECサイト運用をこれから始める、社内体制が整っていないという企業の場合は、サポート体制が整っていて手厚いサポートをしてくれるベンダーを選んだ方が安心です。

・長く使えるかどうか

ECサイトは作ったら終わりではありません。新しい機能の追加や古くなったシステムを更新して、サイトを改修し続ける必要があります。現在のことだけでなく、数年後の要件を考えて構築方法を検討することも重要です。

例えば、将来的に売り上げを上げるための機能や、業務効率を改善するためのシステム連携などのカスタマイズが必要になることも考えられます。
その時、拡張性の低いプラットフォームや、カスタマイズできないカートシステムの場合は、乗り換えを行わなければいけません。
長期的に見ると、初期費用がかかっても拡張性に優れる方法で構築した方が、結果的に費用を抑えられる可能性もあります。

■自社に適した構築方法を考えよう

ECサイトは、構築方法によって拡張性や費用、メリット・デメリットなどが異なります。それぞれの特徴や費用感などを踏まえて、自社に適した構築方法はどれなのかを選定することが大切です。将来的に必要となりそうな機能と連携できるかなど、数年先のことも見据えたうえで、最適な構築方法を考えましょう。
ECサイトを構築する具体的な手順については、以下の記事をご確認ください。

⇒「ECサイトの作り方の手順は? 制作時の注意点などと併せて解説」

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