ステルスマーケティングとは?規制の背景や実施してはいけない理由を分かりやすく解説

最近、SNSやテレビで目にする「ステルスマーケティング」。知らず知らずのうちに商品の魅力に取り込まれている方も少なくありません。実際の事例を見るとテレビやSNS、有名人、YouTuber、インフルエンサーも関わっていることがわかります。

ここでは法的問題や倫理的問題、企業にとってのリスクなどさまざまな側面から解説します。

ステルスマーケティングとは

商品を紹介している女性

ステルスマーケティング(ステマ)とは、消費者に商品やサービスの宣伝を意識させずに行うマーケティング手法のことを指します。

広告だと気付かせないような形で、自然に情報が伝わるような方法で宣伝活動が行われています。一見すると、ただの情報や意見のように見えるものが、実は広告だったというケースが増えてきました。それにはステルスマーケティングならではの独特な特徴があります。次に、それらの特徴について詳しく見ていきましょう。

ステルスマーケティングの特徴

女性がスマートフォンを見て商品を選ぶ

ステルスマーケティングは、一般消費者に対して企業や事業者が広告や宣伝を行っていることを意識させず、自然な口コミやレビューとして伝えるのが特徴です。

一般消費者との直接的なコミュニケーション

企業と消費者との間に第三者(例インフルエンサー)を介入させることで、対象となる消費者に自社の商品やサービスを宣伝。この第三者は企業からの依頼や報酬を受け取ることが多いです。

自然な形でのPR

広告や宣伝が行われていると感じさせないように情報を発信。例えば、SNSでの自然な投稿やブログでのレビューなどがこれに該当します。

認識の困難性

一般の広告活動とは異なり、その存在を明確にすることが少ないため、一般消費者がその宣伝活動を判別するのは困難です。

高い信頼性の獲得

第三者を通じての情報発信であるため、消費者は客観的な意見や評価として受け取る可能性が高まります。

しかし、このステルスマーケティングの手法には法的や倫理的な問題点が浮上してきています。景品表示法などの法規制との関係や消費者庁による取り組みも進められている状況です。企業や事業者は、そのリスクを十分に理解し、意図せずステルスマーケティングとならないよう、適切なマーケティング方法の選択と対応が求められます。

ステルスマーケティングの問題点

チームでMTGするシーン

多くの企業やインフルエンサーが日本での広告・PR活動として実施していますが、さまざまな問題があります。

法的・倫理的問題

不当表示や誤認誘引となる可能性があり、規制や法規制の対象となるリスク。特に景品表示法や消費者庁による取り組みにより、一部の行為が違反と判断される可能性が高まっている。

信頼の損失

発覚時の企業やインフルエンサーの信用の損失は計り知れず、過去には炎上事例も発生している。

報酬や依頼の透明性

第三者が報酬を受け取る形での宣伝活動となるため、その関係性や詳細を明確にする必要がある。

このようにその効果的な宣伝力に魅力を感じる一方で実施する企業やインフルエンサーは法的な背景を理解したうえで、ステルスマーケティングに該当しないように注意する必要があります。

ステルスマーケティングの法的背景

女性が商品を見て悩む

広告や宣伝であることを隠して一般の人々や有名人が自然に製品やサービスを使っているかのように見せかけるマーケティング手法です。特に、消費者の側から見れば、本当にその製品やサービスが良いのか、それともただの宣伝なのか区別がつかなくなってしまう可能性があります。

そして、一定のルールやガイドラインが設けられるようになりました。次に、ステルスマーケティング規制の導入された背景やその理由について詳しく解説していきます。

ステルスマーケティング規制が導入された背景や理由について

窓際のスペースでスマホを扱う女性

日本でこのようなステルスマーケティング行為が問題視されるようになった背景には、一般の消費者が商品やサービスを選択する際の参考資料として、インターネット上のレビューや口コミを信頼して参照する傾向が増加してきたことが挙げられます。その結果、偽の情報や誇張された宣伝が普及し、消費者が誤った選択をするリスクが高まったのです。

こうした状況を受け2023年10月1日より、ステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。この法規制の目的は消費者が安心して情報を取得し、適切な商品やサービスを選択することをサポートすることにあります。

特に報酬を受け取ったにも関わらず、それを明記せずに宣伝活動を行った事例は消費者の信用を大きく損なう結果となりました。

消費者庁もこうした問題点を踏まえ、ステルスマーケティングに関するガイドラインを公表。企業や広告主、そして一般の消費者に対して、ステルスマーケティング行為の問題点や対応方法を明確に説明しています。

景品表示法とステルスマーケティング

引用元:消費者庁『 ~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~

総じて、ステルスマーケティングの問題は深刻であり、その対応としての法的措置は避けられないものとなっています。これからも信頼される情報発信を目指すすべての関係者にとって、正しいマーケティングの方法や手法の選択が求められることでしょう。

出典:消費者庁『 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。

景品表示法(景表法)との関連

景品表示法とは、企業が商品やサービスの宣伝を行う際の不当な表示を禁止することを目的とした法律です。ここでの「不当な表示」とは、消費者を誤認させる可能性のある表示や一般消費者に対して実情と異なる情報を提供するような表示を指します。

ここで重要なのはその関係性や背景が明確に表示されず、一般の消費者がその情報を「口コミ」として受け取ってしまう可能性がある点です。ステルスマーケティングと景品表示法は密接な関連があり、その理解は今後のマーケティング活動や消費行動においても大変重要となってくるでしょう。

出典:消費者庁『 景品表示法

ステルスマーケティングの影響範囲

取材される女性

特に影響範囲として注目を集めているのが『アフィリエイト』です。アフィリエイトはサイトの運営者が商品やサービスを紹介し、その結果として売上が発生した場合に報酬を受け取る仕組みとなっています。ステルスマーケティングを行うことで消費者の購買意欲を掻き立てることが可能でしたが、その透明性の欠如が問題視されていました。

アフィリエイト

ノートパソコンを使う男性

アフィリエイトは報酬を目的として、実際に使用や体験をしていない製品やサービスを「良い」と評価するレビューや口コミが増える可能性があります。これは消費者の誤認を招くリスクがあり、信頼性の低下や法的問題を引き起こす可能性があります。

そのため、アフィリエイトを行う際には正確かつ公正な情報提供を心掛けることが求められます。また、報酬を受け取ることが明示されているかどうかも、消費者の判断材料となるため、透明性を保つことが重要です。アフィリエイトは適切に運用されることで、企業と消費者の双方にとって有益なマーケティング手法となり得ますが、その背後にあるステルスマーケティングに該当しないかなども考えて対応を取ることが不可欠です。

テレビ

テレビ

テレビは私たちの生活に深く根付いているメディアの一つであり、多くの消費者が情報を得る主要な手段として利用しています。このテレビメディアを通じて、ステルスマーケティングが巧妙に取り入れられることもあります。

具体的には、ドラマやバラエティ番組内で、特定の製品やサービスが自然に取り上げられることがあります。これは、一見するとただの番組の一部として見えますが、実は企業からの依頼や報酬を受けて製品を宣伝している場合があります。このような行為は、視聴者がその製品やサービスに対してポジティブな印象を持つ可能性が高まります。

消費者が宣伝行為であることを認識せず、その製品やサービスを購入する判断を誤る恐れがあります。

サクラ

スマホで口コミを書く人

サクラとは、主にマッチングサイトやSNSなどのインターネット上のコミュニケーションプラットフォームで、実際には存在しない架空のユーザーとして活動する人々のことを指します。企業や事業者から報酬を受け取り、特定の商品やサービスを宣伝する役割を果たすことが多いです。

サクラ活動は一般消費者にとっては非常に誤認を招く可能性があります。例えば、ある商品のレビューや評価を見て購入を決意する消費者が、そのレビューや評価がサクラによるものであった場合、実際の商品の品質や性能と異なる可能性があります。このような誤認を招く行為は消費者の信頼を損なうだけでなく、企業の信用も失墜させるリスクがあります。

サクラの存在はインターネットの普及とともに増加してきましたが、消費者自身が情報の真偽を判断するスキルを身につけることで、これらのリスクを回避することが可能です。一方、企業や事業者も、透明性のあるマーケティング活動を心掛けることで、消費者の信頼を維持することができます。

ステルスマーケティングの主な手法

この手法は大きく「なりすまし型」と「利益提供型」です。この方法は、一体どのようなものなのでしょうか。

なりすまし型

スマホを扱う女性

なりすまし型とは、事業者側が第三者を装い、自らの意見や体験として製品・サービスを宣伝する手法を指します。この方法では、宣伝行為であることを消費者に知らせず、自然な口コミやレビューとして情報を発信します。例えば、SNS上での「偶然の製品紹介」やブログでの「日常の中での製品使用」などがこれに該当します。

利益提供(利益提供秘匿)型

グリーンバックで動画を撮影する男性

利益提供型は、一般の消費者や一般人が企業やブランドの宣伝活動を行い、その代わりに報酬や特典を受け取るという形態が取られます。これにより、企業は一般的な広告宣伝費を抑えつつ、口コミや評判を広げることができるため、非常に効果的とされています。

利益提供型のステルスマーケティングは、ブログやSNSなどのオンラインプラットフォームで頻繁に見られます。一般人が実際に商品やサービスを使用し、その良さを宣伝する形で行われますが、消費者にはその宣伝行為が企業によって依頼されたものであることが明示されないことがあります。不当な広告宣伝活動や透明性の欠如は信頼を損ない、企業やブランドに対する不信感を招く可能性があります。そのため、適切な情報開示と倫理的な宣伝活動が求められます。

出典:消費者庁『 ステルスマーケティングの 問題点について

ステルスマーケティングに対する対策

信頼の損失や法的なトラブルを避けるためには事前の予防策や発生した際の対応策をしっかりと練っておくことが大切です。具体的な予防策と対応策について詳しく見ていきましょう。

【企業視点】マーケティング戦略の一環としてガイドライン・ガイドブックの作成

ノートパソコンで作業する男性

ガイドラインとガイドブックを作成し、正しい方法での宣伝活動を心がけましょう。

明確な関係性の表示

企業がインフルエンサーやブロガーに依頼して宣伝を行う場合、その関係性を明確に表示することが必要です。例えば、SNSでの投稿やブログ記事には「PR」「提供」などの表記を入れることで、一般消費者にその内容が宣伝であることを明示します。

誇張や不当な宣伝を避ける

製品やサービスの評価や感想を述べる際は事実に基づいて正確に伝えることが求められます。誇張や不当な宣伝は消費者を誤認させる可能性があり、景品表示法などの法規制に該当する恐れがあります。

報酬や対価の明示

企業が第三者に報酬や対価を提供して宣伝を依頼する場合、その事実を明示することが重要です。消費者がその情報を基に判断を行うため、透明性を保つことが求められます。

リスクの認識と対応

ステルスマーケティング活動が発覚した場合、企業の信用や信頼を失うリスクがあります。そのため、事前にリスクを認識し、適切な対応策を準備しておくことが必要です。

過去の事例を参照

過去に発生したステルスマーケティングの炎上事例や問題点を参照し、同じ過ちを犯さないように注意を払うことが大切です。

【企業視点】企業が取るべき予防策と対応策

チームでMTGする

企業が取るべき予防策としては以下の点が挙げられます。

  • ステルスマーケティングの定義と法的背景をしっかりと理解する。
  • 自社のマーケティング活動が法規制に該当しないか定期的にチェックする。
  • インフルエンサーや第三者との取引において宣伝活動の内容や報酬の関係を明確に記載する契約を結ぶ。

対応策としては以下のような方法が考えられます。

  • ステルスマーケティングが発覚した場合、迅速に事実関係を公表し、消費者や関係者に対して説明責任を果たす。
  • 必要に応じて消費者庁や関係機関との対応を進める。

【消費者視点】消費者が自身を守るための情報の見極め方

スマホでネット検索する女性

情報は日々更新され、新しいマーケティング手法も登場します。しかし、自身の判断力を養い、情報を正確に見極めることで誤った製品やサービスの選択を避けることができます。常に疑問を持ち、情報の真偽を確かめる姿勢が大切です。

情報源の確認

SNSやブログでのレビューや評価を信じる前に発信者が誰であるかを確認しましょう。企業の依頼を受けているインフルエンサーや報酬を受け取っている可能性のある第三者の情報は、客観的でない場合があります。

複数の情報源を参照

一つの情報源だけでなく、複数の情報源から同じ製品やサービスに関する情報を集め、比較検討することで真実に近い情報を得ることができます。

公式情報との照らし合わせ

企業の公式ホームページや公表資料を参照し、発信されている情報が正確であるかどうかを確認しましょう。

過去の炎上や問題点を調査

企業や製品に関連する過去の炎上や問題点をインターネットで調査することでその製品やサービスの信用性を判断する手助けとなります。

消費者庁や関連法規制を確認

景品表示法や消費者庁の公式サイトなどを参照し、ステルスマーケティングに関する最新の規制やガイドラインを確認することで不当な宣伝やPR活動を見極めることができます。

終わりに

今回はステルスマーケティングについて解説しました。

ステルスマーケティングは消費者に気づかれずに商品やサービスを宣伝する手法です。2023年10月より景品表示法違反になりましたので、企業側の商品PRや広告手法などには十分には気を付ける必要があります。マーケティング戦略としてステルスマーケティングは絶対に取り入れられないようにしましょう。