
ECサイトを構築する際、コストを抑えられる方法として利用されるASP(Application Service Provider:アプリケーション・サービス・プロバイダ)。
ASPの利用を検討しながらも、「どのASPがよいのだろう」「どのような軸でASPを選んだらよいか分からない」などの疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ASPの概要から、ASPでECサイトを構築するメリット、ECサイトでASPを選ぶ際のポイントなどを解説します。
【目次】
■ECサイトにおけるASPとは
・1.無料ASPと有料ASPの違い
・2.ASPとパッケージの違い
■ASPでECサイトを構築するメリット
・1.コストを抑えられる
・2.比較的スピーディに導入できる
■ASPを選ぶ際に確認しておきたい5つのポイント
・1.料金体系
・2.商材との相性
・3.ギフトやCRMなどEC事業で実施したい機能があるか
・4.将来的な拡張機能
・5.セキュリティ面
■ASPを使ってECサイトを構築し、集客・販促につなげる
ECサイトにおけるASPとは
ASPは、クラウド上でECサイトを構築できるサービスのことです。レンタルサーバーを用意する必要がなく、インターネット上で容易にECサイトを始められます。
一般的にASPには、カート機能と決済機能の2つの機能が標準搭載されています。サービスによっては、商品管理や顧客管理機能、受注機能なども利用できます。
1.無料ASPと有料ASPの違い
ASPには、無料サービスと有料サービスの2種類があります。
▼無料・有料ASPの相違点
項目 | 無料ASP | 有料ASP |
初期費用 | 無料 | 数千~数万円程度 |
ランニングコスト | 売上に対する利率を支払う | 月額1〜10万円程度 |
機能 | 最低限の機能 | 拡張機能があるなど充実 |
サポート | 限定的 | 充実している |
利用対象者 | 小規模ECサイト運営者 | 中規模ECサイト運営者 |
サービス例 | ・BASE ・STORES など |
・ecforce ・Shopify ・ メルカート など |
無料ASPは初期費用が不要ですが、販売手数料や決済手数料などが発生します。一方、月額費用がかかる有料ASPの場合、サービスによってはこれらの手数料が発生しないケースもあります。
また、無料ASPのサービスによっては独自ドメインが取得できず、検索エンジンでヒットしないケースがあります。その場合は、SNSや広告などを用いて集客する必要があります。
2.ASPとパッケージの違い
パッケージは、ECサイトに必要な機能がセットになっているサービスのことです。一般的に、パッケージでECサイトを構築する場合、導入費用として1,000万円〜数億円程度かかります。ASPと比較すると、導入費用がかなり高額です。
▼パッケージの代表的なサービス
- ・ ecbeing
- ・Orange EC
- ・SI Web Shopping
- ・コマース21
- など
パッケージは、ソフトウェアを買い切るようなイメージです。そのため、自由にシステム開発・システム連携が行えます。一方でASPは、レンタル利用のイメージです。基本的にシステム開発はできません。
ASPでECサイトを構築するメリット
ここからは、ASPでECサイトを構築することのメリットについて解説します。
1.コストを抑えられる
ASPは、ECサイトの構築費用をかなり抑えることができます。他の構築方法と比べれば、その差は一目瞭然です。
▼構築方法別の費用相場
項目/構築方法 | 構築費用の相場 |
無料 ASP | 無料~100万円程度 |
有料ASP | 数十万~300万円程度 |
オープンソース | 500~1,500万円程度 |
ECパッケージ | 1,000万円~数億円程度 |
フルスクラッチ | 数千万円~ |
また、構築費用のみならず、ASPはECサイト運営にかかる費用も抑えられます。ランニングコストは数千円〜10万円程度です。
2.比較的スピーディに導入できる
ASPは、他の構築方法に比べて、スピーディな導入が可能です。
▼構築方法別の導入期間
項目/構築方法 | 導入期間の目安 |
無料 ASP | 最短1週間ほど |
有料ASP | 2~4ヶ月ほど |
ECパッケージ | 最短5ヶ月ほど |
フルスクラッチ | 最短で1年 |
※構築期間は規模によって異なります
ASPではマニュアルやガイドが用意されていることが多く、それらに従って進めれば問題ありません。
自社だけで進めることが不安な場合は、ASPを選定する際に人的サポートがあるか否かを確認しておくことが大切です。
ASPを選ぶ際に確認しておきたい5つのポイント

ここからは、ASPを選ぶ際の5つのポイントを解説します。
1.料金体系
無料ASPと有料ASPのどちらを利用するのかによって違いはありますが、ASPの料金体系は、基本的に「初期費用+月額費用(カートによって従量課金)」です。
導入コストとランニングコストを合わせたトータル費用を算出し、予算的に問題ないかを検討しましょう。
2.商材との相性
ASPには、BtoB向けのサービスもあれば、BtoC向けのサービスもあります。それぞれに異なる機能やサービスがあるため、自社商材に合わせて選ぶことが重要です。
また、総合通販商材あるいは単品通販商材を取り扱っているかによっても、選ぶべきカートは変わってきます。総合通販商材であれば商品点数が多くなっても検索性が担保される機能(検索サジェスト、カテゴリ管理、タグ設置など)、単品通販商材であれば定期に柔軟な変更ができる機能(定期中に届く頻度や指定日を変える機能や、定期で注文している商品を変更できる機能など)が比較検討のポイントになります。
3.ギフトやCRMなどEC事業で実施したい機能があるか
自社でギフト商材を扱っているなら、ギフト機能を搭載しているカートを選ぶ必要があります。たとえば、“のし・ラッピング”“複数配送先の設定”“名入れ”などの対応が可能か確認しておきましょう。
また、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)機能を求めるなら、ECカートにCRM機能が付随しているか事前にチェックしておく必要があります。
特に無料ASPの場合、機能が不十分なケースが多々あります。たとえば、
「テンプレートのデザインしか利用できない」
「登録できる商品情報に制限があり、運用に負荷がかかる」
「セグメントしたメール配信はできない」
など、販促領域でやりたいことができない事態が発生します。
求める機能が搭載されているかを確認し、各ASPの特徴と合わせて比較検討しましょう。
4.将来的な拡張機能
商品数や決済手段を増やしたいと思った際に、拡張できる機能があるか否かもチェックしておきたいポイントです。
ASP自体をシステム開発でカスタマイズできないといった制限や、システム連携も制限があったりします。売上が上がるにつれて求められる『システムの拡張性』はカート選定でも重要なポイントになります。
仮に拡張に対応できないことが要因で、別のECカートに乗り換えるとなれば、顧客データや商品データ、注文データなど、さまざまなデータの移行が必要で、さらに決済代行会社が変わるケースだと、登録しているクレジットカード情報や、定期の注文データは移行できないなど、機会損失に繋がるケースもあります。
そのうえ、新しいECサイトで顧客に会員登録をしなおしてもらう必要があります。その際に会員数が激減するケースもあるため、長期的な視点に立って慎重にASPやプランの選択を行いましょう。
5.セキュリティ面
ASPでは、ベンダー側がセキュリティ対策やシステムメンテナンスを行うため、ユーザー側で対応する必要がありません。ただASPによってセキュリティ基準は異なる為、下記のような視点で各社のセキュリティレベルを確認することを推奨しています。
- ・WAF対策
- ・DDoS対策
- ・SQLインジェクション対策
- ・バッファオーバーフロー対策
- ・コマンドインジェクション対策
- ・ロボット対策( Google reCAPTCHA )
- ・パスワード複雑化の強制
- ・なりすまし対策(追加認証)
- ・管理画面のIP 制限、URL 秘匿化
また、ASPによっては、担当者ごとに使用権限を設定できます。たとえば、商品登録はできても、注文処理を行ったり、会員データ(個人情報)に触れたりすることはできない、といった設定が可能です。このような使用権限の設定についても事前に確認しておくことを推奨します。
最後にカート側では無いですが、決済代行会社のオプションで『3Dセキュア』という選択肢があります。昨今ではECサイトにおけるクレジットカードの不正利用が増えているので検討してみてください。
ASPを使ってECサイトを構築し、集客・販促につなげる

ASPカートは、導入・運用コストを抑えつつ、スピーディに導入することができます。
選ぶ際には、料金体系や商材との相性、セキュリティ面などの観点から比較検討しつつ、長期的に見て拡張面や機能面に問題ないかをチェックしておくことが重要です。
「ASPでECサイトを立ち上げたいけれど、人的リソースやノウハウ的に厳しい」という場合は、ECサイト構築・運営まで一括で任せられる弊社コンサルティングサービスへの相談・依頼を検討してみてください。